ベンハミンはアラベサのサン・ビセンテ・デ・ラ・ソンシエラ、ブリオネス、ラバスティダに、トータル32ヘクタール、58のブドウ畑を所有しています。
いずれも彼の審美眼にかなったものばかりですが、特にサン・ビセンテ・デ・ラ・ソンシエラ城の対岸にある、エブロ川の畔の畑「ラ・リンデ」のテロワールは最高で、彼が最も大切にしている畑の1つです。父親アンドレス・ロメオが植樹し手塩にかけて育て上げたもので、ここから穫れるテンプラニージョのみで「ラ・ビーニャ・デ・アンドレス・ロメオ」が醸造されます。
一方「コンタドール」は、その年の“最高中の最高”のブドウだけで造られます。「コンタドール」の畑やクパージュ(ブレンド)の%が毎年変化するのはこのためです。
ベンハミンはいずれの畑も「ビオディナミカ」を用いて栽培しており、ブドウの収穫には35人のスタッフを総動員し、すべて手摘みで箱に入れられます。これらは最長でも45分以内にボデガに運ばれ、直ちにブドウの選別が始まるのです。そして選定されたブドウは、その日のうちにそれぞれ醸造工程に入ります。
いくつかの代表的な畑について記しますと;
●アンドレスのブドウ畑
畑の名は「ラ・リンデ(La Linde)」。ベンハミン・ロメオの父アンドレス・ロメオが植樹した畑で、エブロ川が大きく蛇行する場所に位置し、ちょうどサン・ビセンテ・デ・ラ・ソンシエラ城の川を挟んで真向かいにあります。
3.5haの畑は、養分に乏しい痩せた土壌で、上面は粘土質、その下は石灰質の地層から形成されています。エブロ川の傾瀉から生じた豊富な丸石によって、排水性はこの上なく良好。栽培品種はテンプラニージョのみ。
親子2代にわたって心血を注いできた樹齢35年の樹々は、「ビオディナミカ(biodinamica=バイオダイナミック)」で栽培されており、畑の一画にはベンハミン手作りのたい肥がうずたかく積まれているのです。
ブドウの樹1本つき、「ラ・ビーニャ・デ・アンドレス・ロメオ」が1本が作られます。
※ビオディナミカ農法:有機栽培の一種であり、農薬と化学肥料を使わず、肥料には動物の糞など自然のものを使用する土壌を破壊しない農法のこと。また、 月・星座・惑星の位置関係、月の満ち欠けなどの情報も栽培(やワイン醸造)に取り入れられる。
●ブリオネス村のブドウ畑
隣村「ブリオネス」にもベンハミンの畑がいくつもあります。中でも1世紀以上も前に植樹されたブドウだけで形成されるこじんまりした畑は、ベンハミンのお宝です。
ここには、テンプラニージョ、ガルナッチャ、ガルナッチャブランカ、ビウラ、マルバシアと、リオハの固有品種だけが「混植」されています。こういったスタイルの畑は、今ではほとんど見られなくなりました。それぞれの農家が小区画の畑でブドウを栽培していた昔は、土地を最大限に活用するため混植が当り前に行われていたリオハですが、ここ数十年で畑の転売が繰り返された結果、その多くが大区画の単植畑に姿を変えてしまったからです。
また近々、リオハでもついに「外来種(ソーヴィニヨン・ブランとシャルドネ)」の植樹が、原産地呼称統制委員会から正式に認可される予定。
そんな中、「僕はリオハの固有種だけにこだわりたい。なぜって、昔からこの地に根付いているブドウが気候風土や土壌に一番マッチしているし、最高のポテンシャルを発揮するはずだから」と気を吐くベンハミンを、まさに体現しているかのような畑なのです。
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